Bellwood Academy ロゴ物語|第2話「本」

> 「このままで、いいんだろうか」 そう自問したあの日から、静かに時間が流れました。
前回は、“盾”の話をしました。 守るために、でも逃げないために――僕が静かに手にした備え。
けれど、「守る」だけでは、物語は動き出さない。
>心のどこかでためらいながらも、前に進むには、もう片方の手に“武器”が必要でした。
▼この連載について
この連載は、僕が60歳で始めた挑戦「Bellwood Academy」のロゴに込めた思いを、自身の半生を振り返りながら紐解いていく、全五話の物語です。
第1話:盾 第2話:本(←今回) 第3話:蜂 第4話:リボン 第5話:飛び立つ蜂
僕はまず、自分の“これまで”を見つめ直すことにしました。
なんとなく避けてきた棚卸し。思い出すのが少し面倒だったり、恥ずかしかったりする過去の経験たち。 でも、何かに手を伸ばす前に、「今、自分に何が残っているのか」を確かめたかった。
思い出したのは、あるプロジェクトの一場面でした。 メールシステムの刷新。 影響範囲は広く、現場も神経をとがらせていました。
ところが、ある重要な設定情報が、たった一人の担当者の頭の中にしかなかったのです。 その方が数日休みに入っただけで、プロジェクトは静かに止まりました。
みんな、「これではまずい」と心の中で思っていた。 でも、誰もその人に直接は言えなかった。
現場に流れていたのは、技術的な不安よりも、 「誰も知らないということの怖さ」でした。
そのときに感じたことが、ずっと僕の中に残っていたのかもしれません。
> 「知識は、抱えているだけでは意味がない。 それを次に手渡せるかどうかが、本当の価値なんだ」と。
そんな思いから、独立を決めた後、僕は『CMDBクックブック』という形で、自分の知識を書き始めました。
なぜ「クックブック」かというと、調理のように“すぐに使える”“再現できる”ものにしたかったからです。 ITという“見えにくい構造”を、シンプルに、誰でも取り扱えるようにしたかった。
難しい理論や仕組みじゃない。 大切なのは、「あのとき、僕はこう考えた」「こんな工夫をした」という生の知恵。
それは、武器というより“静かな知恵の手渡し”でした。 言い換えれば、自分にとっての「最初の本」だったのだと思います。
もうひとつ、自分の“今”とも向き合いました。
職業訓練校での再学習。 今さらHTMLやCSSなんて…と思わなくもなかったけれど、 「これから」をちゃんと自分の手で切り拓くには、避けられない勉強でした。
クラスでは年齢的に浮いていたし、頭も最初はついていきませんでした。 でも帰り道、コンビニでおにぎりを頬張りながら思ったんです。
> 「ああ、いま自分の人生に、少しずつ手をかけられている気がする」って。
派手なことはしていません。
“過去”を棚卸しして、かたちにする。 “今”を見つめ直し、足りないものを学び直す。 それだけのことでした。
でも、それが「自分のための、本当の武器作り」だったのだと思います。
だから、Bellwood Academyのロゴには「本」が描かれています。 それは、ただの知識やマニュアルではなく――
誰かが迷ったとき、
> 「ああ、こんな歩き方もあるんだな」と 思ってもらえるような、やわらかい灯りのような本です。
あなたにも、まだ言葉になっていない経験が眠っていませんか?
誰にも見せていなかったその知恵が、 誰かにとっての道しるべになるかもしれません。
最後に、ひとつだけお聞きしてもいいでしょうか。
あなたが、まだ言葉にしていない“経験”―― それが、誰かの「本」になるとしたら。 どんな記憶を、そっと手渡したいですか?
よかったら、教えてください。
> その物語が、まだ立ち止まっている誰かの背中をそっと押す「本」になるかもしれません。
(→ 第3話「蜂」へつづく))

